2014年01月11日

焙煎スタイル!

新年あけましておめでとうございます。
昨年は、ブログの更新が少なすぎましたので、今年は去年の倍くらいにしたいなと思います。できれば月イチくらいで書きたいですね(去年はそんなに少なかったんだ!)。それでは今年もよろしくお願い致します。




さて2014年最初のお話は、焙煎について。


焙煎をするのに、これはほかのことにも言えるのであるが、やっぱりここをおろそかにはできないなあと思うのが段取りである。段取りをきちんとしたほうがいい理由は、段取り通りにやれば素晴らしい結末が待っているから、である。
もともと「段取り」は芝居で使われる言葉で、芝居を成功させるために細かいところまできちんと決め事をしておくこと、だそうで、焙煎も同じで、カップにしたときの素晴らしいコーヒーを思い描いて、その結果になるように細部をきちんとデザインすること、これが段取りであろうと思う。

それを踏まえて僕が大事に思っていることは、二つである。
一つは、きちんと自分の中でカップにしたときの素晴らしいコーヒーがイメージできているかということ、もう一つは、そのためにデザインした段取り通りに進行したかということ、である。
この二つの要素は主従の関係になっていて、まずイメージがあり、それを実現するための段取りをデザインし実行するわけである。
この主と従が逆転することは無い。なぜなら、完成型のイメージが無いのに段取りが組めるわけが無いからである。

さて、この二つであるが、非常に大事な前提条件をそれぞれに持っている。
まずイメージの話では、その完成型、つまりカップになったときに、素晴らしいものになっているということ、そしてそのカップはきちんと自分の目指しているものであることである。
そして段取りの話では、その段取りは完成型になるようにデザインされているか、そして再現性が高いものかどうかが大事だ。

二つを並行して話していとどうもこんがらがりそうなので、イメージと段取りの話を分けて、すこし説明しよう。

イメージというのは、カップにしたときに、飲んだ人がこう思うはずだという具体的なイメージである。それは、焙煎者によって違って当然だろうし、実際に違うのだろうと思う。
例えば、こんな感じだ。
焙煎者A「スペシャルティコーヒーの神髄を味わってもらえるようなカップ」
焙煎者B「毎日飽きずに飲めるコーヒー」
焙煎者C「深煎りファンが唸る味」
焙煎者D「違う世界にトリップできるような」
焙煎者E「イタリアのバールを彷彿とさせる」
焙煎者F「小さな幸せを日常に感じてもらえるカップ」
エトセトラエトセトラ(素子嬢オマージュ)。これは焙煎者の数だけイメージがあってもいいのではないかと思う。
イメージするところが何かというのが決まっていれば、いつもその心の原則に従って焙煎をするはずである。ブラジルであれエチオピアであれ、コンテスト入賞豆であれ平凡な豆であれ、いつも心の原則が生きた焙煎になる。そしてそれが焙煎者のスタイルになる。
つまり、カップにしたときにその焙煎者それぞれのスタイルがカップに出るわけなんだ。ただ、最初からスタイルがあるわけじゃない。そのスタイルは作り上げていくものである。厳しい言い方をすれば、スタイルを確立しなくていいい焙煎者もいるだろうし、確立したくても志半ばで舞台を降りる人もいるだろう。スタイルがあると思ってやっていても伝わらないってこともあるかも知れない。むしろ、スタイルがあるって周りが認めるほどの焙煎をしている人のほうが極々少数派なのだろう。僕だって、ぜんぜんスタイルがあるなんてとこに到達してない。でもそのスタイルをなんとかして表現したいと思ってる。

段取りについては、これはもうイメージしたカップを実現するためにどうやったらいいかということに尽きる。
投入温度は? ガスのコントロールは? というようなテクニカルな部分をきちんと段取りしてなければダメだ。毎回ブレるようでは、タナボタなカップがあるようでは、ダメ。どういうカップにしたいかというのがあればその結果を得るために段取りが決まるわけだから、ブレたりフロックがあったりはしないハズなんだ。
ただし、その段取りは「こんくらい」が通用する世界である。「釜の蓄熱量がこんくらいだから、ガスはこんくらい」が通用してこそスタイルだと思う。データ通りに再現したら同じ焙煎になった、ではスタイルが出てるとは思えない。スタイルがあるってことは「あ、これはアイツが焼いたコーヒーだ」ってことなんだ。
それをもっと突き詰めて考えていくと、焙煎しているときの服装や、その時に聴いてる音楽、焙煎機に当たる照明なんかも、目指すカップに合わせていかなきゃならない。(おっとオカルトじみてきましたか? 読者がサーっと引いていく音が聞こえますが気のせいですか?)

で、イメージの話と段取りの話の理解が深まったところで、ちょっと前のほうに戻る。
主従は逆転しないという話だ。

主はイメージ、従は段取り。これが合わさってスタイルになる。
という話なのだが、まず段取りありきということにはならないところが重要である。例えば、とあるコーヒーを飲んだら「ちょっと焦げてる」と感じたとする。しかしそれがスタイルであれば容認され得るというところが重要なのである。
主であるイメージに「ちょっと焦げ」という要素が入っていればそれはむしろ成功であると言える。きちんと「ちょっと焦げ」をカップに出すように従である段取りをデザインできており、その段取り通りにきちんと焙煎した結果であるからだ。
ネガティブな「焦げ」を例に出すとわかりやすいので、最初にこの例を出したが、そのカップを手に取った全ての人が感じるすべての要素が、スタイルとして容認され得るところが重要である。極端なところを言えば「彼の焙煎したコーヒーは美味しくない。しかしそれが彼のスタイルとしてそれが支持されている」ということもあり得るのである。もちろんポジティブな要素でスタイルが構成されている場合のほうが多いと思う。しかし、ネガティブな要素がスタイルになり得ない、ということはあり得ない、のである。

コーヒーそのものの価値のほかに、お客様はいろんな価値を見出してそのコーヒーを支持する。常に袋の中のコーヒー豆だけの価値で購入するわけではないし、カップの中の液体のみを味わって判断しているわけではない。
パッケージはどうか、お店の雰囲気は、立地条件や交通の便、コーヒー以外のメニューは、などとコーヒー以外にまつわる要素はいくらもある。しかしながら、スタイルというものに惹きつけられてそのコーヒーを支持する、ということもあって然るべきだし、実際にある。無いと困る。(無いってことになるとここまでの長文が意味無くなっちゃうんだよ)

誰かを惹きつけてやまないそのスタイルの圧倒的な魅力の前では焦げや水抜き不足など取るに足らない揚げ足取りなのかもしれないし、良く焼けたからと言ってそれがスタイル未満であれば誰かの目を奪ったり足を向けさせたりする要素にならないのかも知れない。
というようなことが、ある。あると信じる。信じて、僕は焙煎するのだ。



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2014年、新しい焙煎「b-profile」によるコーヒーを順次発売していきます。
いままでのSSEのようで、まったく新しいSSE。そんなコーヒーを実現する「b-profile」コーヒーで、いままでと違うSSEのスタイルを感じてください。
posted by ホゼ at 20:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 焙煎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月09日

2013JHDC顛末記(2)ビッグサイト編

はい、時は流れてSCAJ2013inビッグサイトです。

僕はジャッジとして参加しているので、自分で写真を撮ることができなかったので、このブログに貼る写真をウェブから探そうと思って画像検索したら、いやまあびっくりするくらいJHDC(決勝)の写真が無い(笑
意外と観客多いなあと思ってステージ上から見てたんだけど、みんな競技があまりにも面白すぎて写真撮るの忘れちゃったのかな?(おいおい
というわけで、またしても主に文字だけで進行していきますごめんなさい。


さて、大舞台の東京ビッグサイト特設ステージとは言え、前半は予選と同じルール。でもそこは予選とは違う大人数の観客とか手もとをカメラで撮られて大画面モニターに映し出されるとか、ちょっと(かなり?)勝手が違ったかも。

お借りしてきました当日の写真
アルミドリッパー.jpg
元の記事は準決勝進出の小田原の移動カフェalfieri-streetさんのブログより

そして決勝となる。

余談だが、僕は決勝ではヘッドジャジを任された。コーヒー業界に身を置くこと4年、このような大役を任されたのは初めての経験で、これは非常に良い経験をさせていただいた。感謝。

さて、決勝である。
決勝では、
・自分で好きなコーヒーを使用できる
・かなり自由な抽出ができる
・プレゼンが必要
といったところが予選と違う。ただ抽出技術を競うだけでなく、そこには「お客様」の存在が見えてくる。実際にはジャッジをお客様に見立ててということになるのだが、ただ美味しく淹れるだけでは勝てないルールになる。

まず、自分で好きなコーヒーを使用できるという件だが、当然、美味しいコーヒーを持ってくるわけである。スペシャルティコーヒー協会が主催しているわけで、そのコーヒーはSCAJ方式(COE方式)で高得点であることが望ましいというか結果的にそういうコーヒーのほうが得点しやすい可能性がある、のではなかろうかと思う。
ただ、それはその豆のカッピングスコアが高いほど、JHDCでの得点が高くなる、というような簡単なことではない。というか、その豆が美味しかったかどうかという項目はそれほどウェイトがあるわけじゃない。カッピングスコアが高いに越したことはないが、ペーパードリップにマッチした風味特性かどうかというほうが重要なんじゃなかろうかと思う。
もちろん、そのコーヒーのポテンシャルを引き出すことが必要であるのだが、それ以上にカップになったその液体にするために、自分はなぜそのコーヒーを選んだのか、どういう意図で、どういう目的があって、というのが大事である。

次に抽出の自由度である。スポンサーが用意した器具を使用しなければならないのは同じだが、予選ほどガチガチの抽出ルールではない。わりと自由に抽出してOK。
持ってきたコーヒーをどうやったら一番美味しく淹れられるか、そこが腕の見せ所。長年の経験やカン、独自の理論、はたまた臨機応変に抽出状況を見ながら、とにかく皆さんそれぞれ工夫して抽出していた。
これもまた、なぜそういう抽出をしているのか、などということが非常に重要になってくる。美味しいことはもちろん求められているのだが、どうやって美味しさを引き出しているのか、抽出の技術がどれほど関与しているのかというのが重要。

そしてプレゼン。準決勝までは技術を競ってきた皆さんが突然エンターテイナーに生まれ変わる瞬間である。立て板に水のごとくなめらかなプレゼンあり、たどたどしくも心に響くプレゼンあり、情報を事細かに伝える人や自身の思いのたけをぶつけてくる人、いろいろあったが、これ、プレゼンの重要なところは、
×ジャッジ「感動した!」
○ジャッジ「なるほど!」
なのである。
どういうことかと言うと、わかりやすいとか伝わるとかそういうこと以前の問題で「こうしたかったので、こういうふうにやってみた。だからこうなった」をちゃんと言うことが大事なのである。言い換えれば、目的と手段と結果がリンクしていなければならないのだ。
×競技者「バランスを良くするために、メッシュをできるだけ細かくしました」ジャッジ「関係性がよくわかりません」
×競技者「美味しいコーヒーを抽出したいので、高地産の豆を使うことにしました」ジャッジ「低地産でも美味しいコーヒーはあると思います」
×競技者「愛情がコーヒーを美味しくします。私は抽出は愛だと思います」ジャッジ「いい心がけですが、カップに反映されてません」
○(例)競技者「後味のクリーンさを求めて、粗めに挽き抽出を早めます。しかしスカスカの風味では困るので標準的な粉量よりも30%多くしていますので、濃度も十分に出ます」ジャッジ「なるほど、粗めで早い抽出ですがきちんと濃度を保ってますね」
・・・ただし、最後のマルの例でもジャッジが「え?濃度出てないよ」「見たところ3分以上かかってるからそんなに早い抽出じゃないんじゃない?」などと、結果として言ってることとやってることや結果が違っていると、ダメなのよ。目的と手段と結果のリンク、これ大事です。
で、その「目的と手段と結果がリンクしている」上で、笑いあり涙ありの感動的なプレゼンをしていただくと、非常に高得点になります。

プレゼンのところが長くなったけど、やっぱりプレゼンが決勝の競技の醍醐味でもあるので、ここをキッチリとやれてるかどうかというのが得点に大きく影響するし、またたくさんの観客の皆さんが見てても面白いところなので、おろそかにできない部分だと思う。というわけで、説明が長々続いてしまってすんませんが、来年の大会に出る人は、決勝ですごいプレゼンをぶちかましていただけますと、競技としても面白いし、観客も楽しめるし、いいと思います。

んで、決勝は、やっぱりというかなんというか、このカップは美味しかったということとこの人のコーヒーを飲みたいということが、高い次元でバランスしている人が上位になったと思う。
抽出をする技術が高く、それをサーブするサービス能力も高い、というような人だ。
これってお店に立ってるときにも同じことが言えるんだと思う。抽出の技術とサービス係としての能力がどちらも高いという人が、そりゃ好ましいわけだよね。
ハンドドリップチャンピオンシップの決勝で上位に行くような人は、きっとお店でもしっかりとした接客ができてて、お客様に美味しいコーヒーを楽しんでもらっている人なんだろうなあと思う。
そういうところをちゃんとジャッジは見てるんです。そしてそういう人が優勝、あるいは上位入賞を果たしたんだと確信しています。


というわけで、ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ、今年涙を飲んだ出場者も、観客席で見てた人も、このブログを見て初めて大会の存在を知った人も、それ以外でもコーヒーを自分で淹れる人はみんな、来年出場したらいいと思うよ。すごく出場の敷居が低い大会なんで(なにしろペーパードリップなら大抵の人が経験あると思う)、誰でも気軽に出場できるし、出場するとなったら準備でいろいろ試してみたりして経験が豊富になるし、そして大会ではいろんな人の考え方、抽出方法などがすごく勉強になるよ。


で、僕も去年今年とジャッジを務めさせていただいて、非常に良い経験になったし、すごく勉強になったんで、来年も大会に関わっていきたいと思います。というわけで出場(予定)の皆さん、次の大会もよろしくお願いしますね。
posted by ホゼ at 23:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月05日

2013JHDC顛末記(1)予選編

SCAJ2013も盛況のうちに終了し、僕の2013JHDCも終わったので、記録のために顛末を書いていきます。




まず、JHDCとは何かというとこれ。

SCAJのページ

メニュー左側にSCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)が主催する大会がずらっとならんでるけど、その中の一つで、まだ若い大会で今年やっと二年目(二回目)となる、ペーパードリップの大会だ。
ちなみにJHDC以外の大会はすべて、概要や歴史といった、紹介のページが用意されているがJHDCはいきなり参加者募集のページが開く。委員会の方、概要のページを用意していただけますとうれしいですね。

んで、大会の流れとしては、こんな感じ。
って、昨年が一回目、今年で二回目ということもあり、ルールが固まってないところが多く見られ、予選の流れなんかも「今年はこうだからね><」みたいな感じになってる。
中の人たちがなるべくいい大会にしたいと日々頭をひねり、知恵を出してルールを作り変えているので、去年と様変わりしたところも多い。実感としては、ジャッジとしては去年より良くなったと思う。競技者の方たちはどう思っただろうか。
ちなみに、来年の大会でまたルールが変わる可能性があるので、以下の流れは今年版ってことでお願いします。


<地方予選・一回戦>
クジによる4人一組の予選から一人、当該予選日の午前/午後決勝へ勝ち抜け
使用するコーヒーは当日知らされる
器具はほとんど持ち込み無しでできるくらいに用意されてるけど、ポットなど持ち込んでもいいものがいくつかある
プレゼンすることもないし、服装も自由、さらに器具もほとんど会場にあるのでなんだったら手ぶらで来れるくらいの気軽さ

<地方予選・決勝>
勝ち残り4人一組で、予選日の午前/午後決勝を争う
ルールは同じ

<ビッグサイト・決勝第一ステージ>
4人一組で第二ステージ勝ち抜けを争うが、勝ち抜けるのは1組の中で上位2名
ルールはほぼ同じ(会場が違うため、細かいところですこーし違うところがあったが無視できる範囲だと思う)

↑↑↑ここまでとここからで全然違う競技になります↓↓↓

<ビッグサイト・決勝第二ステージ>
一人ずつ競技、自分で持ち込んだ豆をプレゼンしながらジャッジへ提供
カップの中の液体の評価だけで完結した決勝第一ステージまでと違い、
・そのコーヒー(液体)をきちんと自分で評価しており、その評価をジャッジに的確に具体的に伝えられる
・抽出係としてだけでなく、サービス係としても一流である
・もちろんカップの中の液体が美味しい
というのが(非常にざっくりだけど)評価基準になるので、これまで職人っぽく「美味しいコーヒーを抽出する」ことだけに専念してきた競技者が、いきなりエンターテイナーとして動かないといけなくなるわけだ。
たいへんである。




はい。というわけで、去年も務めたジャッジを今年もやることになったわけです。
話はもうずっと前にさかのぼるわけだけど、打ち合わせやらカリブレーションやらあって、実際に予選日になるところまでは、たいして面白い話もないので割愛。あっというまに東京予選第一日目。

使用するコーヒーは当日知らされる、というのは競技者だけではなくてジャッジも同じである。
競技に使用するコーヒーを、午前の部であれば朝イチ、午後の部であれば昼過ぎに渡されるわけである。
渡されて、ジャッジはどうするかというと、ちゃーんとカリブレーションをするわけである。そのコーヒーに対する「共通の認識」を共有するわけである
そのためには何回もドリップして何回も飲まなきゃならないわけだけど、ここでしっかりと意見交換して基準を合わせておかないといけないから、大変である。基準が作れるまで何度も何度も飲むわけである。

そして、予選のジャッジに臨むわけなんだけど、主についたての向こう側にずーっと座ってるので、ジャッジ紹介のときくらいしか皆さんの前に出ることは無いというもうほんと黒子みたいな役目。

ついたての裏でとにかく飲み、採点し、飲み、採点し、飲み・・・とやっていくわけなんだけど、予選のスケジュールというのが、午前の部を4組(4人一組)やってそれぞれの勝者で午前の部の決勝を行い、午後の部も同じようにやる、それを三日間ということになっており、三日間で合計30セットの競技を行わなければならないということになっている。とにかく忙しい。これはジャッジもそうだけど、運営スタッフ、ボランティアの人たちもとてもとても忙しいのだ。しかし、こちらがしくじると競技者の皆さんにものすごい申し訳ないことになるので、忙しいからなどと言ってられず、とにかくスムースに競技が進むことに全員で全力投球し、実際になんとか滞りなく競技会が終了できたのではないかと思っている。

予選競技がどんな感じだったのかはこちらのブログをご覧ください。雰囲気がわかると思います。
JHDCへの想い|The heart is wrapped
SCAJの中の人のブログです。

和気藹々としながらも真剣勝負、完全なイコールコンディションでの腕試しだから出てる人も見てる人も手に汗握る競技会だった。




それではジャッジ視点でのJHDC予選の感想を。


予選のジャッジをやって、これは!と思ったことが二つある。
ひとつは、ハンドドリップ難しすぎということ。
もうひとつは、美味しいは正義ということ。


ハンドドリップがどんだけ難しいかということだけど、その理由はまず、なんと言っても安定感なさすぎる抽出方法だということだ。
機械的な計測ができる部分が少なすぎる。
ヤマカンとかいつも通りとかこんくらいとか、そんなんで抽出に臨まなければならない。とにかく、そのときそのときで抽出条件が変わりすぎるのだ。

まず湯温だ。注ぎ始めのポット内の湯温が90度だとして、温度計を刺して90度になった、よし注ぐぞ、というタイミング、その後の湯温の変化はどうなるかわかる?当然湯温はポットの温度に影響される。ポット全体の温度はどのくらいだったの?重量比でお湯に対してポットが10分の1もあれば、湯温に対するポットの温度が与える影響が大きいのは言わずもがな。また、ポットに入れるお湯の量が多ければ温度変化が少ないのはわかると思うけど、だからと言って、最初にポットに入れるお湯の重さを計るなんてしないよね。

次にコーヒーの粉。1杯分12gの粉を使うとして、ミルには12gの豆を投入するよね。ガーっと挽いて出てきた粉はきっちり12gだろうか。いや、んなことはないわけで、ミルの歯から粉の排出口までのところの粉の残りがあるので、きっちり入れた分が出てくるわけじゃない。もし0.5gも残ってたら(それは見た目には微々たる量なんだけど)4%ほどの誤差になる。前の時に残ってれば今度はそれが押し出されてきたりして、前後で言えば1割近い誤差が出る。150t抽出するところ、165tも抽出したら、けっこう違うなって感じになると思うんだけど、それと同じくらいの誤差が挽いたときに発生する可能性があるってこと。

はい次。抽出。お湯を何回かにわけて入れる人、ツーっと筋のように入れつづける人、いろんな人がいるけど、同じように注げるわけがない。コーヒメーカーじゃないんだから。これはみなさんよーくわかると思う。

というわけで、大きな要因を三つ書いてみたけど、これ以外にもドリップというのは均一に淹れさせるもんかっていう意図のもとに設計されたんじゃないかと思うほど、同じ結果を得にくいようにひとつひとつの工程がデザインされている。
その原因はと言えば、つまるところ「人が操作する部分があまりに多すぎる」ということになる。人間というのは、それほどに同じように同じことをやるのが苦手であるということだ。同じ結果を出す、ということにかけてば、数千円で買えるコーヒーメーカーにも劣るということだ。

この難しすぎるハンドドリップで、均質かどうかということがスコア上重視されているというのは、勝ち上がるにはかなりハードルが高い。幸運や偶然に期待するんでなければ、相当に練習を重ねないと結果が伴わないルールである。
そして勝ち上がった人たちは、やっぱりちゃんと練習をしてきたんだろうね。均質であった上、美味しかったんだからね。


はい、そしてもうひとつの感想、美味しいは正義であるということ。

抽出というのは、ある程度理論があって、こうやるとこういう風味になるというのがある。熟練した抽出者ならば、整理整頓した知識でなくとも経験則でなんとなくこーしたらこーなるってわかってるようなことである。また、大会に出ようなんて人たちだからおそらくはたくさんの条件で抽出をしたことだろう。そうすれば、自ずとその理論めいたものに近い経験をしてきていると思う。
つまり、出場者は「こんな風味特性で」と狙って抽出してきていると思っていいわけだ。

さて、そんな「狙った」風味特性はどうなるかというと・・・ 狙いすぎるとあんまり好ましくないんだなこれが。

とにかく香りをバーンと出してやるぜ→味がスカスカです
ボディ感で勝負だ→シブ味でも勝負しちゃいましたね
飲みやすくシルキーなマウスフィールで→印象に残らないです
しっかり抽出して口当たりを強く→飲みにくいです

みたいなことが往々にして起こるわけ。
どっかをピーキーにすると、その弊害が出てきてしまう。
じゃあどうするかというと、平均を狙うと好ましい風味になるんだね。バランスをよく表現しようとすれば、自然とほかの項目(酸であるとか、後味であるとか)も向上していく。
平均からこぼれない程度の振れ幅の範囲内で個性を出していくというのが良さそうである。実際、得点が高かったのは、そういうカップであった。どれほど狙い通りのカップになったとしても、そのカップの印象が破綻していては高得点は望めない。
平均的なカップというのは、美味しいのだ。減点法で言えば、あまり減点がないカップである。加点法で言えば、どの項目もほどほどに加点されているカップである。つまり、得点しやすいカップなわけである。
得点できているということがすなわち美味しい、ということではない。得点できている、というのはスコアシート上の話である。各項目でそれなりにいい点を取っているということであり、それ以上でも以下でもない。
しかし、実際に得点できているカップは美味しいのだ。好ましい風味特性を持っていると言い換えてもいい。逆に得点できてないカップは、好ましくない風味特性(の項目が少なくとも1つ以上ある)なわけ。ここに相関があるのは間違いないので(じゃないとスコアがおかしな話になるのでこれは当たり前の話なのですが)、とにかく美味しいという風味を、好ましく思う風味を高次元でバランスさせることを狙っていただくと、得点につながっていくのじゃないかと思う。
「しっかり味が出てるけど雑味は感じず、薫り高く、飲みやすく、後味も良く、全体に破綻していないようなカップ」と言うのが高得点につながるし、こういうカップは飲んで美味しいのだ。

そして決勝にコマを進めた競技者たちは、こういうカップであったはずだ。


というわけで、長くなったんで続きます。
posted by ホゼ at 22:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月19日

円錐ドリッパー用最新型フィルター「リテンションフィルター」を試してみた

このブログを読んでいる皆さんの中には、コーヒーについてかなり知識を持ち、最新のコーヒー事情にも通じているという方も少なくないと思う。先日、メルボルンでコーヒーのショーがあった際にそちらで最新コーヒー事情に触れてきたという方もいらっしゃるだろう。
しかし今回紹介する「リテンションフィルター」については、ご存知ない方ばかりではないかと思う。それほどに、最新のできたてほやほやのアイテムなのだ。

ハリオV60用のフィルターは紙もあり金属もありプラスチックのメッシュのものもあり、もちろん純正品もありサードパーティ製のものもありと、まさに選び放題、選択肢が多すぎて悩んでしまうほどである。
そんなV60用フィルターマーケットにまた新しく、期待の新星が現れた。それがこの「リテンションフィルター」である。

金属と紙のハイブリッドというのは、数あるV60用フィルターの中でもこれが初ではなかろうかと思う。そしてオーソドックスながら最適な抽出のための液体のフローを考え実現した形状を持っている。この最適な抽出のために、異なる素材のハイブリッドが必要不可欠であったわけである。
ポリッシュされたアルミを多用したメタリックな質感は高級感があり、しかし紙の部分があることで無機質な見た目とはならず、あたたかみのあるデザインになっていることも見逃せない。


と、講釈はこのくらいにして、実際に写真を見ながらじっくりと解説して行こう。


まず、ハリオ純正の01用ペーパーを用意する。そして、同じ出来上がりサイズになるように折りシロを見越してふたつ折りにしたキッチンホイルをカットする。

アルミドリッパー (1).jpg

なにやらいきなり話の雲行きが怪しくなってきたが、このフィルターはどこに売ってるわけじゃなく、いわば「ちょっと変わったフィルターを自作してみたよ」的な話である。
それでも読んでみようと思う方は、下に進んでいただきたい。

接合部の折込をしっかりすること、それとサイズをきっちり同じにして密着性を高めるために、ハリオのフィルターと重ね合わせて折り目をつける。

アルミドリッパー (3).jpg

そして接合部を二重に折り返して、アルミのフィルターカバーの出来上がりであるのだが、もちろんこれではお湯が通るわけないので、お湯の通り道を空けてあげる。というか、このアルミの部品はお湯の通り道を阻害する壁になるべきパーツである。
下から三分の一ほどをカットする。

アルミドリッパー (5).jpg

このようになり、ペーパーフィルターと、その上部のお湯の流れを阻害する壁が出来上がった。

アルミドリッパー (7).jpg

上から見てみると、こうなる。

アルミドリッパー (9).jpg

フィルターを湯通しする人も多いのではないかと思うが、今回は特に湯通しが重要である。ペーパーが濡れていると、アルミのパーツが密着するからである。
実際に装着してみると、こうなる。

アルミドリッパー (12).jpg

並べてみた。

アルミドリッパー (14).jpg

それでは実際に抽出してみよう。
コーヒーはホンジュラス、グッドバランスで果実感もあり長く余韻の続く良いコーヒーである。
今回は、20gのコーヒーに対し、湯温95度で加水200g、注湯開始後45秒を蒸らしとした。そして200gのお湯を投下後、落ちきったところでドリッパーをはずすということにした。

アルミドリッパー (15).jpg

リテンションフィルターのほうは、ろ過面積が圧倒的に狭いため、通常はフレンチプレス用になる程度の粗めの挽き方にした。

アルミドリッパー (16).jpg

一方、ハリオ純正フィルターのほうは通常の挽き目である。

アルミドリッパー (17).jpg

※iPhoneのカメラで撮っているため、ホワイトバランスとかめちゃめちゃなのはご容赦ください

ハリオ純正ペーパーのほうは、オーソドックスな抽出を心がけた。

アルミドリッパー (21).jpg

一方、リテンションフィルターのほうは、ろ過部分が下部にあり、しかも狭いために、注湯方法がまったく異なったものとなる。
・壁際にじゃんじゃんかけて良い
・対流するようにお湯を注して良い
・真ん中から円を描かなくて良い
・お湯を注ぐスピードは気にしないでいい
・水面の高さは気にしない
極端に言えば、ハンドドリップでよく言われる禁忌を片っ端からやっていい、というようなメソッドである。

アルミドリッパー (23).jpg

抽出の時間は同じになるように、メッシュと壁の高さを調節してあるので、ほぼ同じタイムで落ちきった。
ハリオ純正ペーパーのほうは、残ったコーヒーの粉がよくあるペーパードリップ後の形になっていることがわかる。

アルミドリッパー (25).jpg

しかし、リテンションフィルターの場合は、まっ平らである。そりゃそうだ、この注ぎ方ならそうなる。

アルミドリッパー (24).jpg

そしてできたコーヒーである。もちろん、見た目は変わらない。

アルミドリッパー.jpg

それでは気になるリテンションフィルターの風味のチェックである。
リテンションフィルターで淹れたコーヒーは、ハリオ純正に比べ、ややあっさり目の出方となった。抽出そのものはよくできているが、粗めに挽いたことによるさっぱり感が出ている。後味もクリーンであったので、より軽い味わいに感じた。ハリオ純正はしっかりと抽出されており厚みのある風味に感じたが、やや喉に残るような後味であった。甘さも、ハリオ純正はねっとりと粘るような甘さを感じたが、リテンションフィルターはすっと消えていくような甘みであった。

ろ過面積を制限することで思い切った粗挽きを可能にし、上部を壁で覆うことにより注湯に繊細さを求めなくても良くなった。結果的に、純正フィルターとはかなり違った味作りをすることもできたし、なかなか良いシステムであると言える。

もし誰かこのアイデアを製品化してくれるのであれば、こちらまでご連絡下さい。
サンシャインステイトエスプレッソ www.sunshinestateespresso.com

アイデア料は格安にて!
posted by ホゼ at 16:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | カフェ用品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月06日

このコーヒーの飲み頃はいつですか? あるいはエージングの話。

コーヒーが焙煎されてからの時間の経過について、こんな質問をされることがある。
「どのくらいで風味が悪くなりますか」
「いつまでに飲みきればいいですか」
「いつごろが飲み頃ですか」
時間の経過に関する質問でよくある三つだ。
もちろん、コーヒーは焙煎したあと、品質が変化していってしまう。それはどんな生豆を使おうが、どんな方法で焙煎しようが、どのような保管をしようが、抗えない事実である。
もちろん、時間の経過にそってテイスティングをしたり、保管方法を試したりと研究はしているのだが、どんなに研究を重ねてもこれらの質問に歯切れよく「こうこうですよ」と回答はできないのではないかと思っている。
風味が変化することは間違いないが、直線的に「悪くなっていく」わけではないからだ。

oldcoffee.JPG

スギロースティングのブログにエージングに関する記述がある。1日〜14日のエージングをしたコーヒーについて。
ここでは、14日経過後のほうが味にまとまりがある、などの記述がある。
>>バリスタキャンプin丸山珈琲小諸店2日目。/今日のカプチーノ


焙煎後、品質は変化するのは間違いない。それがいいほうに変わるのか悪いほうに変わるのかは、人によりけりだろう。炭酸ガスが出てる最中のものが好ましいと感じる人もいれば、1ヶ月以上経ってからのほうが好きだという人もいるのではないか。

とは言っても、品質が悪くなる時期が到来することもこれはこれで間違いないので、密閉しようが冷凍しようが、半永久的に品質が保持できるなんてことはないわけで、常識的に考えて1年もたったコーヒーが焙煎後と同じクオリティで美味しく飲めるなんてことはないと思ったほうがいい。
また、水分が若干含まれていることや、有機物であることから、虫や細菌、バクテリアなどがつくことも考えられる。やはりそんなに長く保管しておくべきではないだろう。

以上を総合すると、

Q.どのくらいで風味が悪くなりますか
A.味の変化を楽しむなら、きちんと保管できるという前提で1ヶ月くらいの間楽しんでもいいんじゃないでしょうか。でもその後急激に風味が悪化していくということはないと思われますので、カビや虫に注意して3ヶ月くらいは大丈夫だと思うんですがそこは自己責任で。

Q.いつまでに飲みきればいいですか
A.食品として衛生的に問題が出ないうちにお願いします。僕の経験では、半年前のは飲めました。

Q.いつごろが飲み頃ですか
A.お好みにより今日から1ヵ月後くらいじゃないでしょうか。それ以降という方がいらっしゃってもおかしくないですけど。

ということになっちゃうよなあ。

コーヒーは鮮度が命とか、海外からの輸入コーヒーは美味しいわけがないとか、飲み頃は何日目!とか、2週間で飲みきれる量を買えとか、ドリップで膨らまないコーヒーは品質が悪いとか、そういうのは眉に唾をつけて聞いたほうが良さそうよ。





ところで、この記事を書くにあたっていろいろ調べたりしてたら、ちょっと二酸化炭素についての疑問が出てきた。
焙煎で二酸化炭素が出る、っつーのは常識だよね。でもその常識、本当に正しいの?

というわけで、これはもちっと調べて別の記事にします。
posted by ホゼ at 12:36 | Comment(2) | TrackBack(0) | エスプレッソ技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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